【Report】#ミニアトリエ「きむらとしろうじんじん 野点」@豊中市役所前

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#ミニアトリエ「きむらとしろうじんじん 野点」@豊中市役所前

2024年11月24日(日)豊中市役所前で開催された市のイベント「きむらとしろうじんじん 野点 in 豊中西部」。2018年と2023年に引き続き、野点の屋台メンバーの一人として、本づくりの体験ができるミニアトリエをひらきました。

きむらとしろうじんじんさんの野点とは!??(豊中市役所のイベント案内ページより)

陶芸お抹茶屋台としての「野点」
大・小2台のリヤカーに、陶芸釜・素焼きのお茶碗・うわぐすりなどの陶芸道具一式と、お抹茶セット一式を積んで、街のさまざまな場所に現れ、お茶碗を焼いてお茶が飲めるカフェを開きます。お客さんはその場で素焼きのお茶碗に絵付けをし、楽焼き(らくやき)という方法で40分程で焼きあげられた自作のお茶碗でお茶を楽しむことができます。

令和6年度(2024年度) きむらとしろうじんじん 野点(のだて)

じんじんさんの「野点」とは?

じんじんさんの野点は、2014年から豊中市の都市活力部 魅力文化創造課主催で毎年豊中市内の各地で開催を重ねて今年で11年目。野点本番の数か月前にじんじんさんと開催する町の人たちや市役所の方も一緒になってまち歩きをして、会場を決めてゆくところからはじまります。

みんなで町を歩きながら「その町らしい」場所を探して、その場所が使えるように市役所の方が交渉して会場を決め、野点当日の絵付けや楽焼きのサポートも町の人たちが関わり、一緒にたのしみながらつくり上げる。

野点ではその日に絵付けをして焼き上げた器を持ち帰るため、会場には器が焼けるまでの待ち時間にお客さんがたのしむことができる「妄想屋台」という小さな屋台も並びます。この屋台も町の人たちが相談しあって、何かお客さんと一緒にたのしめるような体験を考えながらつくり上げています。

michi-siruveは2018年に市役所の方からこのイベントを教えていただき、まちあるきに初参加。普段は豊中市外の病院や地域の中のクローズドな空間でひらいていた本づくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」の道具や素材を並べて、屋台メンバーの一人としてミニアトリエをひらきました。

2018年のミニアトリエの様子

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豊中市内ではじめての、屋外でもはじめてのオープンなアトリエ。一人では心細くて、「かげあつめ」のイベントでご一緒した浅井さんにも声をかけ、二人でアトリエをひらきました。

幸いお天気には恵まれ、野点目当てにやってきた子どもたちがたくさん遊びに来てくれて、それぞれの自由な表現や本との関わり方に立ち会うことができました。ふらりと覗いてくださった方が市内の看護師さんだったり図書館の司書さんだったりと、市内の専門職の方との出会いがあったことも、その後の市内での縁が広がるきっかけになりました。

2023年のミニアトリエの様子

翌年は体調不良、さらに翌年からは感染症流行の影響もあり、患者さんやご家族さんとの接点も多いmichi-siruveは数年参加できない時期が続きましたが、その間も野点は市内各地で続いていました。いろんなことが制限されてしまったコロナ禍以降に、それでも集うという灯を消さなかった野点関係者のみなさんの姿勢にとても励まされた記憶があります。

ようやく感染症の影響も薄れてきた2023年は馴染みのある市内の原っぱで開催ということを知り、2018年もご一緒したくるくる工房さんや豊中市内で度々交流のあった「コト⇄コト」さんの助けも借りながら、ささやかなアトリエをひらきました。

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5年ぶりのオープンなアトリエ。お久しぶりの市役所のみなさんや屋台メンバーのみなさんからいろんな助けを借りながら、原っぱの木陰の下に作業台つきの立派なミニアトリエをつくることができました。

子どもたちのちいさな問いや声にならない問いに耳を澄ませ、一つずつ一緒に見つめて考えます。アトリエの周りにも「持ち帰って本づくりができたら」と手製本や素材を丁寧に見つめて選んでくださる方や、「掌の記憶」や「ココロイシ」などmichi-siruveが過去に制作したZINEを読んでくださる方が集まってきて、久しぶりにみんなが思い思いに集う景色の中に戻り、しあわせな時間でした。

2024年のミニアトリエの様子

そして今年の開催は豊中市役所前。事務手続きでしか通ったことがないエントランスで野点だなんで面白い!と、屋台メンバーとして参加することにしました。今年は体調もよく体力も持ちそうだったので、いつもは輪の外から眺めていた野点の設営もお手伝いすることに。

数時間後にお客さんがきてくださる光景を想像しながら、野点用の器を焼くための窯やお茶を点てる道具を載せた大きなリアカーの場所をきめ、次に器の絵付けをする場所、焼けた器を磨く場所、受付などの野点の設えを決めて、サポートスタッフが協力して少しずつ道具をひらいて野点の景色をつくってゆきます。

初参加の方もベテランの方も、他のまちの方も市内在住の方も、大人も子どもも一緒に自分ができることを少しずつ持ち寄る野点のスタッフもまた、屋台とは違った出会いや発見がありとてもたのしい時間でした。


最初は市役所のエントランス前の階段を展示スペースに見立てて手製本をずらりと並べたのですが、予報外れの雨に降られてさぁ大変!屋台や野点のメンバーのみなさんにも助けていただきながら、屋根のある通路に大移動しました。

再設営となってしまい普段のアトリエのような静かで落ち着いた空気を整えられず申し訳なかったのですが、それでも立ち寄ってくださったみなさんが思い思いに時間を過ごしてくださり、今年も立ち寄ってくださったみなさんのいろんな表現に触れ、声をきく時間を過ごすことが出来ました。

アトリエでお話したことはその時間のものとして留めますが、許可をいただいて撮影したアトリエの様子を少しだけのせておきます。

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「まち」というひらかれた場所で出会うということ

いつもは病院や地域のクローズドな空間で、がん医療や福祉の文脈の中で患者さんやご家族さんとや専門職のみなさんでひらくことが多いアトリエですが、「じんじんさんの野点の屋台のひとつ」という安心できる設えのもと一緒にまちなかに出るアトリエもまた特別。

クローズドな空間で体験や想いをわかちあえる人たちとひらくアトリエもかけがえのないものですが、ひらかれた場所でさまざまな立場や経験の人たちと出会い、語りあえるオープンなアトリエもまた、ささやかでもかけがえのない瞬間がたくさんありました。

たとえば、子どもたちがわいわい元気に本づくりをしている横で、michi-siruveの「家族の記憶」を綴じたZINEを読みながらご自身の大切なご家族との思い出を静かに語ってくださる方がいたり。真っ白な手製本を選びながら、綴りたい想いについておはなししてくださったり、ZINEをめくりながら一緒に来られたお友だちと人生のいろんなことをおはなしされていたり。

以前別のまちで開催したアトリエや展示にきてくださった方が、またふらりと訪ねてくださったり。
わたしが別の方のおはなしをおききしていてアトリエを空けてしまっていた時に、本づくりに迷っていた子どもたちのそばにいて一緒に本をつくってくださったり。アトリエが満席で座りきれなくなった時、アトリエを知る仲間が増席してサテライトのアトリエひらいて様子をみてくださったり。

お子さんと一緒に本づくりをされていたお母さんが「どこのがんだったんですか?」ときいてくださり、絨毛がんという妊娠・流産からのがんの治療だったことや、がん経験者としての素直な気持ちをおはなししたり、お母さんが感じておられることを教えてくださったり。そんな風に大人たちが素直な気持ちを分かち合っている様子をお子さんもそっときいておられたり。

がんではない体験を抱えた方と語りあったり、寒いなかでのアトリエを気にかけてくださった方が実は分かちあえる体験をお持ちだったこと後から教えていただいたり。いろんな人たちが偶然に集い、出会う場だからこその景色がたしかにそこにありました。

子どもたちもいる空間で大人が何かを声にするという行為は、時に子どもたちに大きな影響を与えてしまうものです。特に、わたしのZINE(手製本)が表現しているような、がんの体験や大切な人をうしなういたみといった繊細な体験を大人がひらいて語るという行為には、ほんとうにたくさんの配慮が必要だとも思います。

それでも、いろんな年齢や立場や経験の人たちが集う「まち」や「社会」といったひらかれた空間で、そういった語りづらさをともなうけれど、人が生きていく中で確かにあるものに触れたり、それに対して大人たちが「素直な気持ち」を表現した声をきけるひとときがあるというのは、子どもたちがいつか大人になりそのような体験に直面した時、ささやかでもみちしるべになりうるかもしれないと願う気持ちもあります。

2025年にむけて…

これからも問い続けながら配慮のかたちを考えながらではありますが、来年以降もひらかれた空間でのオープンなアトリエも、年1~2回でもよいのでひらけたらなという気持ちが強くなりました。

どこで、だれと、どんなふうに?ということはこれからじっくり考えながら、いろんな人を頼りながらになるかと思いますが、そんなアトリエをひらくことができた時は、ぜひ遊びにきていただけたらうれしいです。

何よりも、2024年の野点のアトリエにお越しくださったみなさん、助けてくださった屋台のメンバーのみなさん、そして野点を運営してくださったすべてのみなさんに感謝しながら、2024年の記憶として綴り置かせていただきます。

また来年も、どこかでお会いしましょうね。

「記憶のアトリエ」について

Schedule

2018年
5/27  #001  「記憶のアトリエ」in 静岡
8/12 #002  「記憶のアトリエ」 in 富山
11/3  #003  「記憶のアトリエ」in 静岡
12/15  #004  「記憶のアトリエ」in 兵庫

2019年
3/31 #005「記憶のアトリエ」in 埼玉
4/6 #006「記憶のアトリエ」 in 兵庫
6/8 #007「記憶のアトリエ」in 静岡
7/25 #008「記憶のアトリエ」in 宮城
8/17 #009「記憶のアトリエ」in 富山
8/30,31  #010「記憶のアトリエ」 in 兵庫
10/19 #011「記憶のアトリエ」in 大阪
11/9 #012「記憶のアトリエ」in 静岡

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2020年 ~
※安心して開催できる状況になるまで、オープンなアトリエの開催はお休みしています。クローズなアトリエは再開しておりますので、お気軽にご相談ください。
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