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2019-11-18

#012 「記憶のアトリエ」in 幸ハウス

2019年11月9日(土)10:00~16:00まで、 静岡県富士市の川村病院に隣接する幸ハウスさんで、4回目となる「記憶のアトリエ」 in 幸ハウスをひらきました。

がん患者さんやご家族、ご友人が過ごすことができる場所として、昨年春に誕生した幸ハウスさん。がんになり孤独や戸惑いの中にいる患者さんやご家族が気軽に訪れ、安心して話ができ、自分の力を取り戻せる場所として、毎週水曜日にオープンされています。

幸ハウスさんでは「患者さんやご家族が大切にしたいことを大切にできる場所でありたい」という想いから、定期的にさまざまな専門性を持った方を招いたプログラムも開催されています。その一つとして“大切な記憶”に触れ、綴じる「記憶のアトリエ」にもお声がけいただき、わたしも春と秋に「記憶のアトリエ in 幸ハウス」をひらき、本づくりのワークショップも続けています。(第1回目の様子、 第2回目の様子 、第3回目の様子)。

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4回目の開催となる今回も、前日に伺い設営を行いました。迎えてくださったのは、看護師の植竹さん。

幸ハウスの大きな木のテーブルに腰かけ、本棚や木々の変化を見つめながら。前回のアトリエから今日まで、毎週水曜日に積み重ねて来られた幸ハウスさんの足跡を一緒に辿ります。そして明日のアトリエをたのしみにしてくださっている方のことも伺い、明日はどんな時間が流れるだろうと想像しながら設営へ。

半年に一度の訪問だからこそ、この半年で育まれてきたもの、そして今回のアトリエをたのしみにしてくださっている方の想いを感じて場を設えみなさんをお迎えできるように。この時間はとても大切な時間です。

設営中、同じ建物にある訪問看護ステーションの看護師さんも覗いてくださり、数日前に椅子から落ちて腰を痛めていたわたしを心配して「久しぶりー、腰大丈夫だった?」なんて声をかけてくださったり。
回を重ねるごとに、幸ハウスで「記憶のアトリエ」がひらかれていることも、大阪から来たわたしが居ることも「特別なこと」ではなく、春と秋の幸ハウスの営みの一部としてみなさんの中で育まれつつあることをうれしく感じた設営になりました。

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翌朝目覚めると、ホテルの窓から大きな富士山が。阪神間の小さな山の麓で育ったわたしには、この存在感にいつも驚かされます。雨予報から一転、晴れてくれたことにもほっとしながらタクシーに乗り込みました。

行先を伝えると「川村病院さん、土曜日もやってるんだっけ?」と運転手さんが話しかけてくださいました。病院も診療しているけれど、わたしは隣接する幸ハウスさんでがんを経験された方や地域の方に向けたアトリエをひらくんですと伝えると、「わたしも川村病院さんでがんの手術してもらってね」と、運転手さんのお話に。わたしのがん経験についても尋ねられ、お互い今日生きていることに感謝しながら「頑張ってね!」と送り出してくださいました。

以前お世話になったタクシーの運転手さんや、アトリエの日に幸ハウスにいらっしゃる地域の方々も「わたしや家族が治療してもらっってね」というお話をしてくださることが多く、この地域の方々にとって身近な病院であることをいつも感じます。

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今回はオープンまでに少し時間があったので、幸ハウスの外観も撮影。三角の土地のかたちがそのまま建物になっています。木の扉をひらくと、そこはもういつもの幸ハウスさんの空間が広がっているのですが、建物の中には訪問看護ステーションの事務所と、看護師さんの休憩スペースも別々にあります。

設計はNOSIGNERの太刀川英輔さん。直接お会いしたことはないのですが、3年前に取材旅で伺った宮城県石巻市の「OCICA」も太刀川のデザインでした。思いがけずまた太刀川さんのデザインに触れることになり、その力を感じています。(この秋にはGerman Design Award 2020: Excellent Architecture – Architecture部門で”Winner”アワードも受賞されたそうです)

幸ハウスの向かいでは、川村病院の独立型緩和ケア病棟の建設もはじまっていました。今ある病棟、独立した緩和ケア病棟、そして幸ハウスが隣接して患者さんやご家族の人生とともに歩むかたちが、来春には整うそうです。病院と隣接した場所に幸ハウスのような場所があることは、がんを経験した患者として、また患者家族として、そして緩和ケア病棟で家族を見送った遺族としての記憶も持つわたしにとっても、心の拠り所だなと感じます。

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木の扉がひらくと、そこはいつもの幸ハウス。すーっと広い空間に、木のぬくもりとあたたかな陽のひかりに満ちています。外の音は聴こえないくらい静かで、入るだけでいつもホッとします。

今回も、本棚の前の大きな木のテーブルを本づくりの空間に。本づくりの道具や素材を並べて、アトリエ開催中は自由にみなさんのペースで「“大切にしているもの”を見つめるワークショップ」を体験していただけるようにしました。

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奥の空間は、誰かの“大切な記憶”を綴じた本を並べて、ゆっくり過ごすことのできる空間に。展示の什器も、本棚の棚板や収納ケースなど、その場にあるものをお借りしながら本を並べています。

この空間でくつろいでいらっしゃる方に、わたしからお声がけすることはあまりないのですが。それぞれに何か大切な記憶を感じながらお過ごしくださっている様子を、いつも遠くから見つめています。

前回のアトリエに参加してくださった山梨の訪問看護師さんが、季節の押し花の贈り物を幸ハウスに預けてくださっていました。

包みを広げると、色とりどりの野花がたくさん。花の美しさはもちろん、そのお気持ちがうれしくて。早速アトリエの机に並べて花畑に。お越しくださったみなさんを笑顔にする小さな花畑とともに、10時のオープンを迎えました。

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10時を少し過ぎた頃、通院前に立ち寄ってくださった方がお一人目。お話しているうちに、いつの間にかアトリエのあちらにもこちらにもお越しくださったみなさんが。川村病院への通院・入院中にお越しくださった方、地域の方、そして幸ハウスや「記憶のアトリエ」に関心を持って遠方からお越しくださった方。

みなさんそれぞれに本を手にとってみたり、幸ハウスのスタッフさんとゆっくりお話をされたり、アトリエスペースで本を綴じてみたり。日常よりも少しだけ深いところを見つめる静かな時間が流れます。

今回もみなさんが制作された本の様子をご紹介しながら、アトリエに流れる時間を少しでも感じていただけたらなと思います。

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以前にも幸ハウスにお越しくださり、娘さんの「幸ハウスに行きたい」という声でお越しくださったというご家族。普段から絵を描くことが大好きだという娘さんがアトリエに並んだ画材やガラスペンを試しながら、どんどん本の物語を綴られていました。

ご両親も一緒にテーブルを囲んで、本づくりの時間。会話の中で娘さんが描いたインコに、お父さまが試し描きされていたスイスのクレヨンの色を重ねてみたり。アトリエで過ごした記憶が、そのまま本の中に綴じられていました。

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前回前々回のアトリエにもお越しくださり、大切な記憶を本に綴じてくださった方。お母さまが幸ハウスの近くにお住まいで、お庭の花を摘んで素敵な花束を持ってきてくださいました。

看護師の植竹さんが花器に移してくださっている様子を見ているうちに、うっかり写真を撮り損ねてしまったのがとても残念なのですが。上品な秋の花がふわりと広がる花束でした。

今回は少しだけ用意していた豆本に、ガラスペンでイラストを描いてくださっていました。次のご予定があり、綴られた本をじっくり見せていただくことができなかったのですが……心も体もあたたまるスープの記憶の1ページだけ、撮影させていただきました。

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第1回目の「記憶のアトリエ」で本づくりに参加してくださった方。今までの人生で出会った大切な人の記憶を本に綴じてくださいました。幸ハウスの本棚にも寄贈してくださり、いつもお越しくださった方にご紹介していました。

1年半ぶりの再会を喜びながら、おはなしをしながら。大阪で一緒に「記憶のアトリエ」をひらいた紗輝ちゃんがプレゼントしてくれたイラストを見つけて「とってもかわいいね」と、1つ1つ丁寧に選んで豆本にしてくださいました。

ご主人に似ているというイラストを交えて、豆本の中に四季折々を。出来上がった豆本の写真をイラストを描いてくれた紗輝ちゃんにも送ると、とっても喜んでくれました。大阪と山梨、離れて暮らすお二人の記憶が、静岡のアトリエで重なったこと、わたしもとてもうれしかったです。

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「お母さん、きっと好きだから」と、お母さまの車椅子を押しながらお父さまとお越しくださった娘さん。娘さんが前回のアトリエを覗いてくださり、今回ご両親と一緒にお越しくださいました。

入り口からすべてフラットな幸ハウスさんは、車椅子でも安心してお入りいただけます。まっすぐ本づくりのテーブルにお越しくださり、娘さんがお母さまに本づくりの説明をしてくださいました。

「いいわねぇ」というお母さまの笑顔で、本づくりを体験されることに。娘さんが隣に座り、お二人を見守るように斜め向かいにお父さまも腰をかけ、テーブルの上にならんだ画材やシールを手にとりながら、お母さまのご希望を尋ねながら本づくりがはじまりました。

「こんなのもあるよ」「あんなのもあるよ」と、アトリエの彩りをお母さまの手元に広げながらやさしく声をかける娘さんに「これにしようかな」「これはお正月だね」とお母さまが笑顔で応えます。

シールの山からお正月のものを選んで門松を描かれたり。列車がとおる花畑を描かれたり。本づくりをしながら交わされるやさしい声と笑顔に触れ、その場にいたみなさんにも笑顔が広がっていました。

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お姉さんと妹さんでお越しくださった方。しばらく奥のスペースでゆっくりお過ごしされていました。妹さんが先に参加してくださり、あとからお姉さんも隣にお越しになり、お二人で本づくりにご参加くださいました。

「大切にしているもの」を考えるのは中々難しいと心配されていたのですが、あちこちから寄付で集まりテーブルの上にならんだ色とりどりの記憶の欠片を手にとるうちに、少しずつ表情も緩んでたのしんでくださいました。

何もないところから考えるというのは、とても孤独で大変な作業ですが。「アトリエにお越しくださるみなさんへ」と寄付してくださったたくさんの記憶の欠片に触れるうちに、お越しくださった方々の記憶の中にある「大切」が浮かんでくるということに、何度も立ち会うことがあります。これはわたし一人ではとてもできないことで、気持ちを寄せてくださるみなさんがいらっしゃってこそだと改めて感じました。

お帰りになる頃にはそれぞれに選ばれた色とりどりの記憶を手に持ち、お越しくださった時よりも緩やかな笑顔のお二人をお見送りすることができました。その笑顔の変化に、うれしい気持ちでいっぱいになりました。

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「記憶のアトリエ」のことを知り、遠方からお越しくださった方。奥のスペースに展示していた、大切な記憶を綴じた豆本「掌の記憶」1冊ずつじっくり読んでくださっていました。

本づくりのテーブルにお越しくださった時、美しい羽根をおさめた小さな瓶を見せてくださいました。本に綴じるために持ってきてくださった、大切な小鳥さんの羽根。本当に美しくて、見せていただいたわたしも「いとおしいな」という気持ちになりました。

小さないのちとの別れは、ともに生きてゆく中でどうしても避けては通れないものですが、せめてそのぬくもりを大切な記憶として本に綴じて、ずっと触れることができたら……ふわふわとやさしいそのぬくもりの傍で本づくりをされている様子を見つめながら、「記憶のアトリエ」がそんな場所でもあれたらと改めて感じました。

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午前中に本づくりをたのしんでくださったご家族がお昼からお戻りになり、本づくりのテーブルはいっぱいに。小鳥が大好きで、将来「インコカフェ」をつくりたいという娘さんが『インコ図鑑』を綴っていました。

隣で小鳥の記憶を綴じてくださっていた方と一緒に、図鑑の中からこちらをみているインコたちを覗き込みながら……いつかカフェがオープンしたら、遊びに行きたいなと思います。その時まで、この『インコ図鑑』も大切にしていただけたらうれしいです。

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他にも綴じてくださった本があったのですが、全部は写真におさめることができず……今回はみなさんとのおはなしの時間を大切にしていたら、あっという間にアトリエの時間が過ぎてしまいましたが、それだけみなさんと交わしたものの多いひとときとなりました。

今回のアトリエも、お越しくださったみなさま、そして設営から最後まであたたくサポートしてくださった幸ハウスのみなさま、本当にありがとうございました。

2018年の春からはじめて、丸2年。このレポートの最初にも綴ったとおり、回を重ねるごとに幸ハウスで「記憶のアトリエ」がひらかれていることも、大阪から来たわたしが居ることも「特別なこと」ではなく、春と秋の幸ハウスの営みの一部としてみなさんの中で育まれつつあること。またそんな営みとしてみなさんの記憶と声に触れる機会をいただけていること、とてもうれしく感じています。「また来年」と声をかけてくださる方がいること、あたたかく迎えてくださる場所があること、本当にありがたいです。

「記憶のアトリエ」in 幸ハウスは、2020年も春と秋にひらかれる予定です。この2年で継続してお越しくださる方や、入院・通院中の方やご家族も飛び入りでご参加くださることも増え、少しずつアトリエが育ってきたことも感じています。

みなさんがお過ごしくださる様子やいただいた声をもとに幸ハウスさんと相談して、来年のアトリエは手製本の種類を増やして、当日ひょいと飛び入りでもおたのしみいただけるようなかたちを考えています。少しずつ、よりいっそうお一人おひとりの「大切にしているもの」を見つめて綴じる場にできたらなと考えています。

また来年、本と記憶とともに伺いますね。「記憶のアトリエ」を、これからもよろしくお願いいたします。

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Schedule

2018年
5/27  #001  「記憶のアトリエ」in 幸ハウス(静岡県富士市)
8/12 #002  「記憶のアトリエ in 音川」(富山県富山市)
11/3  #003  「記憶のアトリエ」in 幸ハウス(静岡県富士市)
12/15  #004  「記憶のアトリエ」in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)

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2019年

3/31 #005「記憶のアトリエ」in 街の保健室(埼玉県蕨市)
4/6 #006「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)
6/8 #007「記憶のアトリエ」in 幸ハウス (静岡県富士市)
7/25 #008「記憶のアトリエ」in ノキシタ(宮城県仙台市)
8/17 #009「記憶のアトリエ」in 音川 (富山県富山市)
8/30,31  #010「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市)
10/19 #011「記憶のアトリエ」in リレーフォーライフジャパン 大阪あさひ(大阪府大阪市)
11/9 #012「記憶のアトリエ」in 幸ハウス (静岡県富士市)

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2020年
#013「記憶のアトリエ」in 街の保健室(埼玉県蕨市) *春予定
「記憶のアトリエ」 in トコテコ紙芝居小屋 (兵庫県宝塚市) *2020年春から季節ごとに開催予定

「記憶のアトリエ」in 音川(富山県富山市) *夏予定
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