#004「記憶のアトリエ」in 兵庫

2018年12月15日(土)11:00-16:30まで、兵庫県宝塚市にあるトコテコ紙芝居小屋で 「記憶のアトリエ」 をひらきました。

関西での初開催は「がん経験の有無に関わらず“大切な記憶”に触れ、綴じるひとときもお贈りできたらな」という想いから、紙芝居小屋のオーナーのけいこさんと一緒にひらくことになりました。

トコテコ紙芝居小屋のオーナー「紙芝居ユニット トコテコ」のけいこさんは、県内にある心療内科のクリニックで10年以上 、来院者のおはなしを聴くことを続けていらっしゃるカウンセラーさん。公認心理師さんでもあります。

出会いは今から6年ほど前。まちの小さな映画館で続いている映画祭のスタッフとして宝塚に通っていた時、紙芝居をされている姿を見かけたのが最初でした。当時宝塚にあった写真表現大学の講座に1期違いで通っていたというつながりもあり、宝塚のまちで再会しては少しずつ交流を深めていました。

そんなけいこさんとなら「がん」ということばを外しても「病院」という空間を離れても、安心できる空間がつくれるのではないか。そんな想いで紙芝居小屋へ伺いました。

以前「記憶のアトリエ」の“記憶”についてという文章でも綴ったとおり、 「記憶のアトリエ」は、「“大切な記憶”に触れ、綴じるひとときをお贈りしたい」という気持ちからはじめた、小さな移動アトリエです。

アトリエには、わたしが今まで預かってきた「誰かの大切な記憶」を綴じた小さな本や「ご自身の大切な記憶」を綴じることのできる本づくりの道具や素材が並んでいます。そしてそれらと一緒に、アトリエをひらく場所やお家の「大切な記憶」も、少し一緒に置いていただくようにお願いしています。

静岡では、壁一面に広がる本棚いっぱいに並ぶ本たち。富山では、そのお家で暮らすご家族の大切な記憶がいっぱい詰まったフォトブック。紙芝居小屋でも、けいこさんの「大切な記憶」を並べていただけませんか?とお願いしました。

そうして並んでいたのが、ご自宅にあるたくさんの本からアトリエのために選んでくださった小さな木箱におさまる程度の本。『八木重吉 詩集』『モモ』『ひとりごと絵本』『空と樹と』『美しいもの』『みちくさ入門』… 下段には心を見つめるみちしるべになるような書籍も。

そして紙芝居小屋の木の下には、トコテコ紙芝居で普段読まれている紙芝居、トランクの上には絵本や昔の小さなおもちゃもありました。 「カウンセリングも、紙芝居も“おはなし”という共通点がある」「“おはなし”を聴く、読む、つくる、声に出して届ける…どの時間も好きで、“おはなし”のそばに居たい」けいこさんらしい記憶が小屋の中に散りばめられ、小さなワクワクが見え隠れする空間に。そこに「在る」ことから感じとることができるものの豊かさを、改めて感じました。

けいこさんの提案で、奧の縁側スペースはゆっくり過ごすことができる空間に。手前の壁沿いに手製本を、大きな木の下にあたるお部屋の真ん中のテーブルには、本づくりの素材や道具を並べました。共にあるのは、使い込まれた木製家具やあたたかい敷物、虹色の灯がともるストーブ、植物たち。

場が整うと、机を囲んであたたかい飲み物を飲みながらちょっと一息。アトリエでは、静かな時間をお贈りできるように、一緒にひらいてくださる方と確認していることがいくつかあります。

その中でも一番大切にしているのが「お越しくださった方の中から生まれる→(矢印)を大切にする」ということ。お越しくださった方が自由に心地よく安心して過ごしていただけるように、 迎える側からの→(矢印) は極力抑えつつ。わたしたちも自由に心地良く過ごす時間にしたいですね。そんなことを確認しながら、わくわくしながらアトリエをひらきました。

アトリエに流れた時間や交わしたことばは、あの場をともにしたみなさんとの記憶として心の中に留めますが……本づくりをされる方もいらっしゃれば、縁側でおはなしされている方、奥にある本を読んでくださる方も。ひとつ屋根の下、みなさんそれぞれにお過ごしくださっていました。

記憶のおすそわけとして、みなさんがつくられていた本のお写真だけご紹介します。

みなさん、本づくりの動機はそれぞれ。小さな本に綴じられた押し花や紙片も、それぞれ別の町で暮らす方々からお贈りいただいた記憶の欠片です。その欠片が「本をつくろう」と素材に触れた方の記憶と重なり、本に綴じられ、その人の掌の中へとおさまりアトリエから旅立ってゆく。手にとってくださった素材から、贈り主の方のおはなしにもなります。大切な記憶を預り、手渡し、交わしてゆく空間が在る。そのことが、とても嬉しく感じました。

アトリエにお越しになる方々の経験や立場もそれぞれです。「はじめましての方が、小さな空間で気持ち良く共に過ごす」ということが成り立つのは、そこに集われたお一人おひとりが、お互いへの小さな思いやりを持ち寄ってお過ごしくださってこそ。

今回お越しくださったみなさんが笑顔で居て、笑顔で帰ってくださったのは、他の誰でもないみなさんのおかげさま。そして心地の良い空間をひらいてくださったけいこさんのおかげさま。本当に有り難く、かけがえのないことだと感じています。

これが次回ひらいても、また思いやりのあるみなさんが集い、安心してお過ごしいただけるだろうか?という不安もまたいつも顔を出しますが、がん経験者のひとりとして「続けること」を大切にしたいという小さな想いもあります。

大きなことではなく、ささやかに「そっと居る」ことを続けること。そして「そっと居られるひとときを贈る」ことを続けること。

宝塚でのアトリエは、来年もこの場所でけいこさんと春夏秋冬続けてゆけたら…とおはなししています。2019年春は、お庭の桜が咲く季節に。これからも「記憶のアトリエ」をどうぞよろしくお願いいたします。

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