2019年2月12日と3月12日の2日間、甲南女子大学 看護リハビリテーション学部の丸光惠先生からお声がけをいただき、「まなざし」と「声」を綴じるというZINEワークショップをひらきました。
ワークショップに参加してくださったのは「英国スタディツアー」に参加する看護学科の学生のみなさん。約2週間の英国研修への参加を通して、現地の大学や看護の現場、ホームステイ先などで体験したさまざまなことをZINEに綴じて参加者で交わしてみようという意図でお声がけいただきました。
ツアーに出発する前、2月12日にまずは「感じたことや考えたことを綴じる」という視点からの本づくりのミニレクチャーと、手製本やZINEの事例に触れながらアイデアを膨らませてゆく時間を持ちました。
参加してくださったのは、看護学を専攻している学生のみなさん。がん経験者であるわたしは、みなさんが卒業後に出会うかもしれないひとりでもあります。
「まなざし」と「声」を綴じる。つまりは感じたことや考えたことを綴じる一例として、前半は社会福祉の「フォトボイス」という手法の紹介も交えながら、患者家族、そして患者として綴じてきたZINEの紹介を。
がんやさまざまな病気を経験する中で感じたこと、病院の中や外での日々、医療者とのやりとりといった患者の視点からの経験……そしてそんな経験から、患者自身の心の整理、また患者と周囲と想いを交わすきっかけづくりの事例として、ZINEや本づくりの移動アトリエ「記憶のアトリエ」の紹介をしました。
後半は「旅の思い出を綴じよう」というテーマで、旅先での「思い出」の集め方の提案をいくつか。ミニレクチャーは30分ほどにぎゅっとまとめて、のこりの時間は本を囲みながら、色々とおはなしをしながら。質問も受けながら、それぞれの思い出を綴じる1冊を選んでいただきました。
次にみなさんにお会いしたのは、ツアーから帰国間もない3月12日。ちょうど1か月後の再会ですが、みなさんの表情、持ってきてくださったたくさんの思い出たちから、さまざまなことを感じて来られたのだなということが伝わってきました。
普段「記憶のアトリエ」というかたちでひらいている本づくりの時間を大学へ。アトリエに並べている道具や素材を、教室の机に並べていきます。早く来てくださった方から、アトリエの道具や素材の案内をはじめると「かわいい……」「これは何ですか?」とみなさん興味津々。
これは富山のご家族が贈ってくださった紅葉で、これは静岡の医師が贈ってくださったシールで、これは山梨の訪問看護師さんが贈ってくださった押し花で…贈り主の紹介も交えて、素材の紹介を。ガラスペン、水溶性クレヨン、虹色の鉛筆、100枚便箋、活字、小さな封筒…小さな記憶の山から、みなさん気に入ったものを見つけて手の中に集めていきます。
今回「ワークショップ」のかたちでみなさんで一緒に本づくりができるのは2時間。旅の思い出を1冊に完成させるには少し足りないかな…ということもあり、ワークショップのはじめは「みなさんの旅の思い出」を、1分ほどで順番に紹介していただく時間を持つことに。同じプログラムに参加しても、出会ったものや感じたことが本当に十人十色であることが、みなさんも共有できたひとときでした。
その共有で場もあたたまり、ここからは自由な制作時間に。写真1枚にこめられた旅のエピソードを伺ったり「こんな風にしてみたい」と相談を受け、一緒に考えてみたり。当日の様子が少しでもお伝えできるように、それぞれの制作の様子を少しだけ写真でご紹介します。
あっという間の2時間、みなさん手が止まることなく、お互いの思い出も見せ合いながらのひとときでした。
「完成!」とはいきませんでしたが……このあとしばらく時間を置いて、スタディツアーに参加した学生のみなさんと先生方とで、完成したZINEを持参してお茶会をひらきましょうとお約束されていました。
今回お声がけくださった丸先生も「学生のみなさんとのお茶会のために…」と、このあと別の場所で開催したZINEワークショップで、スタディツアーの思い出を綴じてくださっていました。ZINEだから表現できること、ZINEに表現されたからこそ触れ交わすことができるもの。看護学科のみなさんとともにしたこのワークショップで、そのことを改めて感じました。
お声がけくださり、ワークショップをサポートしてくださった丸先生、戸田先生。またZINEづくりに参加してくださった学生のみなさん、本当にありがとうございました。
本に綴じること。ささやかなことではありますが、卒業後、医療の現場で患者さんやご家族の方々と向き合ってゆくであろうみなさんの、表現の種のひとつになるとうれしいです。